文化: 2008年5月アーカイブ

世界遺産 Ⅰ

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ローカルネタですが平泉の世界遺産登録が延期勧告となりました。

地元なので今後奮起してもらう意味で厳しくいいますが、やはりという思いが強いです。

正直、金色堂のある中尊寺一本で世界遺産登録を目指したほうがよかったと思う。

それでも、ギリギリ。

今回の申請では浄土思想とか骨寺村荘園遺跡とか無理があります。

あまり詰め込みすぎで中身が薄く感じられてしまった感があります。浄土思想まで持ち出したうえに範囲が広すぎるのがまずかったと思う。

個々の魅力はあるのですが、まるでお子様ランチのように色々あるけど重厚さに欠けるメニューといっていいでしょう。

世界遺産を見ると近代建築とかで一軒屋が世界遺産になっているようなところも多々あったり、産業遺産でも電波塔1本でも登録になっているところもあります。関連産業だからといって、周辺の鉄鋼所とか鉱山とかまで範囲を広げたらたぶん登録は難しかったと思う。

 

範囲を広げるとか、いろいろ詰め込むというのは一見魅力あるように感じますが、実はそのためにどこにでもある内容に平板化する可能性を持っているのです。

今の合併自治体がそうです。全国どこへ行っても同じです。同じように総合運動場や体育館、バイパスがあって、温泉があって、産直があって、工業団地があって、住宅地があって、観光産業があって、リゾート施設があって・・・。全国全ての自治体が同じです。違いなど見えてきません。

骨寺村荘園が自治体としても単独であったなら、骨寺村だけでも世界遺産登録は可能かもしれません。中世の貴族所領の時代から耕作地も村落自治も保存されている世界的に稀有な例といえるかもしれませんが、村落として自治運営が確立していない現状(自治会があっても正式の自治体ではない以上自治意識があるとはいえない)ではただ耕作地の近代化が遅れた中山間地の村落としか映らないでしょう。

繋がりを重視するあまり、個々の世界的価値をアピールできなかったのが最大の問題で、合併市町村や県など大きな組織がスクラムを組んだことが逆効果だったのではと思うのです。

もし、今回世界遺産登録を目指している平泉の個々の遺産が異なる自治体に散在していたなら、それぞれ自分たちの持っている世界的価値を露骨なほどにアピールするのだろし、そのことが中世村落の自治意識や奥州の中央を意識しつつも独自性の強い文化が今もあるのだなぁと人々を納得させることができるのだと思う。

なんで急に世界遺産の話題を出したかというと・・・。

 

岩手には、日本にはもっと世界遺産に相応しいものがあるのです。

それは

 【 松川地熱発電所 】

我が国最初の地熱をエネルギーに営業発電を開始し、世界でも4番目に古い地熱発電所。

しかも、施設が建設当初からほとんど変わっていない。他国の施設はほとんどが新しくなっているし、坑井も寿命が短いところがほとんど。

世界遺産登録は冷却塔とタービン建屋だけでも十分狙えます。

といっても県レベルで動いちゃうと、周辺の地熱地帯の発電所群や地熱利用と自然遺産とも入れてしまおうとして、結局魅力が薄れて登録延期ー!!とかなりそう。一見広範囲に広げるのは魅力だけど、広く色々テンコ盛りにすると逆にアメリカのカイザー、アイスランドの地熱地帯、イタリアのラルデレロとの違いを出せなくなってきます。

いま国内の発電所の円筒型冷却施設でこれだけ巨大なのってあるのかなー?

なければとりあえず重要文化財に指定してもらいたいものです。

 

最近はあまりに

『 五指之更弾、不若捲手之一挃、万人之更進、不如百人之倶至也。 』

五指のこもごも打つは捲手の一突きに及ばず、万人が交互に突進することは、百人が共に進むことに及ばない。

これを意識するあまり、五指の功、万人のそれぞれの奏でる美しい独自性が失われてしまいました。

世界遺産とはそういった個々の脆く失われそうな世界的価値ある文化や自然が相応しく、何かの試験や競技に勝ち抜くように一捲を振りかざしテンコ盛りにして目指すようなものではないと思うのです。まぁそれでも登録になればいいのですが・・・世界遺産という看板が増えるだけ。

入其国者、従其俗

 【 淮南子 】 斉俗訓

他国に入るなら、其の国の習俗に従う。

「郷に入らば、郷に従え」が有名ですが、この続きがよいのです。 

是故入其国者从其俗,入其家者避其讳,不犯禁而入,不忤逆而进,虽之夷
狄徒倮之国,结轨乎远方之外,而无所困矣。

「他国に入ったなら其の国の習俗に従い、

其の家に入っては諱を避け、禁を犯さず入り、逆らわないで進めば、

異民族の国へ行って、遠方と輸送路を結んでも、困るようなことはない。」

大体こんな感じの訳でしょうか。

 

チベットに於いても、昔から多くの民族が往来していました。

青海省には有名なシルクロードも通っています。

シルクロードといえばNHKの番組で、青海より北の河西回廊の敦煌を通るルートが有名ですが、同じかそれ以上に青海省を通過するルートも重要だったのです。

有名な文成公主もここを通り、青海湖からチベット高原へ入り吐蕃王国へ嫁ぎました。

文成公主は唐の太宗の時代、皇帝の娘ですが、シルク(蚕)を国外へ持ち出したことで有名です。

唐の皇帝の娘ですが、チベットでは観音菩薩の化身として崇められています。

昔からチベットは重要な交易路が幾つも縦横に走っていました。

最近、話題の茶馬古道もそうです。

大昔から、反発や騒乱、戦争は幾度もあったのでしょうが、それでも、商人や隊商、玄奘三蔵のような僧侶や旅人達は、通過するそれぞれの国や民族の異なる習俗や誇りを大切に、且つ、それも旅の楽しみや勉学の一つとして、少しずつ信頼を得て、道を切り開いていったのです。

 

いま、僅か数年で青海チベット鉄道が開通しました。

多くの人々がチベットの文化や自然に魅せられて、訪れる機会がせっかく得られたのに、チベット人の誇りや文化を虐げるような、中央の資本が一斉に入り込んでしまいました。

それまでの漢民族や清真の商売人たちが長い時間をかけて築いてきたチベット人との信頼や文化の交流も無にしてしまうような、勢いで開発されて定住化や農場化を押し進めています。

 

近代化の名の下に、郷の人々を抜きに開発を押し進める手法は、観光産業のうえからもマイナスでしかありません。

日本も含めて先進国の多くが、観光資源となりえる多くの地域文化を失いました。

せっかく、チベットの自然の中で暮らす人々の文化や習俗に触れることを楽しみにしているのに、大きなホテルやロープーウェイなどまるでテーマパークのような観光施設を作ろうとしています。

旅の楽しみは、リアルにそこで暮らしている人々と触れ合える、そのときに、現地の人が自分たちの暮らしを誇りをもって、旅人を心から歓迎してくれるような、政治、経済環境が整えることが体制に求められることなのです。

しかし、グローバリズムによってその地域や地方の文化、経済は大きな打撃を喰らっています。

そして、その反動でグローバリズム反対、過激な地域主義、民族主義的思想も台頭してきました。

世界中で民族紛争が激化していますが、大半が経済格差(とくに資本力の差)から発生しています。

民族や宗教の違いは、精神的拠り所としての旗印的なものとして使われているにすぎないのです。

グローバル化社会でも、少しでも地域や地方で活動する場合「郷に入っては、郷に従う」姿勢があったなら、その反動も和らげることができるのに・・・。

結局、グローバル企業や中央行政府がその地域ごと民族ごとに、製品や商展開、施政を変えていては無駄が多く、グローバル化とはいえないからなのでしょう。

そう考えると、グローバル化と地域の文化と経済の存続は相容れないものなのでしょう。

だからといって、過激な民族主義や宗教に名を借りた暴力を肯定する気持ちはありません。

世界の政治と経済が権力や資本力ではなく、シルクロードの時代のようにそれぞれの国が地域の社稷を守り、人と人同士の努力と信頼の交易が大によるところになれば良いのにと思うのですが・・・。

 

中国だけでなく、日本も、世界中の政府とグローバル企業には地方に対しては 『 入其国者、従其俗 ・・・ 』の通りの政策を期待したいものです。

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