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入其国者、従其俗

 【 淮南子 】 斉俗訓

他国に入るなら、其の国の習俗に従う。

「郷に入らば、郷に従え」が有名ですが、この続きがよいのです。 

是故入其国者从其俗,入其家者避其讳,不犯禁而入,不忤逆而进,虽之夷
狄徒倮之国,结轨乎远方之外,而无所困矣。

「他国に入ったなら其の国の習俗に従い、

其の家に入っては諱を避け、禁を犯さず入り、逆らわないで進めば、

異民族の国へ行って、遠方と輸送路を結んでも、困るようなことはない。」

大体こんな感じの訳でしょうか。

 

チベットに於いても、昔から多くの民族が往来していました。

青海省には有名なシルクロードも通っています。

シルクロードといえばNHKの番組で、青海より北の河西回廊の敦煌を通るルートが有名ですが、同じかそれ以上に青海省を通過するルートも重要だったのです。

有名な文成公主もここを通り、青海湖からチベット高原へ入り吐蕃王国へ嫁ぎました。

文成公主は唐の太宗の時代、皇帝の娘ですが、シルク(蚕)を国外へ持ち出したことで有名です。

唐の皇帝の娘ですが、チベットでは観音菩薩の化身として崇められています。

昔からチベットは重要な交易路が幾つも縦横に走っていました。

最近、話題の茶馬古道もそうです。

大昔から、反発や騒乱、戦争は幾度もあったのでしょうが、それでも、商人や隊商、玄奘三蔵のような僧侶や旅人達は、通過するそれぞれの国や民族の異なる習俗や誇りを大切に、且つ、それも旅の楽しみや勉学の一つとして、少しずつ信頼を得て、道を切り開いていったのです。

 

いま、僅か数年で青海チベット鉄道が開通しました。

多くの人々がチベットの文化や自然に魅せられて、訪れる機会がせっかく得られたのに、チベット人の誇りや文化を虐げるような、中央の資本が一斉に入り込んでしまいました。

それまでの漢民族や清真の商売人たちが長い時間をかけて築いてきたチベット人との信頼や文化の交流も無にしてしまうような、勢いで開発されて定住化や農場化を押し進めています。

 

近代化の名の下に、郷の人々を抜きに開発を押し進める手法は、観光産業のうえからもマイナスでしかありません。

日本も含めて先進国の多くが、観光資源となりえる多くの地域文化を失いました。

せっかく、チベットの自然の中で暮らす人々の文化や習俗に触れることを楽しみにしているのに、大きなホテルやロープーウェイなどまるでテーマパークのような観光施設を作ろうとしています。

旅の楽しみは、リアルにそこで暮らしている人々と触れ合える、そのときに、現地の人が自分たちの暮らしを誇りをもって、旅人を心から歓迎してくれるような、政治、経済環境が整えることが体制に求められることなのです。

しかし、グローバリズムによってその地域や地方の文化、経済は大きな打撃を喰らっています。

そして、その反動でグローバリズム反対、過激な地域主義、民族主義的思想も台頭してきました。

世界中で民族紛争が激化していますが、大半が経済格差(とくに資本力の差)から発生しています。

民族や宗教の違いは、精神的拠り所としての旗印的なものとして使われているにすぎないのです。

グローバル化社会でも、少しでも地域や地方で活動する場合「郷に入っては、郷に従う」姿勢があったなら、その反動も和らげることができるのに・・・。

結局、グローバル企業や中央行政府がその地域ごと民族ごとに、製品や商展開、施政を変えていては無駄が多く、グローバル化とはいえないからなのでしょう。

そう考えると、グローバル化と地域の文化と経済の存続は相容れないものなのでしょう。

だからといって、過激な民族主義や宗教に名を借りた暴力を肯定する気持ちはありません。

世界の政治と経済が権力や資本力ではなく、シルクロードの時代のようにそれぞれの国が地域の社稷を守り、人と人同士の努力と信頼の交易が大によるところになれば良いのにと思うのですが・・・。

 

中国だけでなく、日本も、世界中の政府とグローバル企業には地方に対しては 『 入其国者、従其俗 ・・・ 』の通りの政策を期待したいものです。

文化の優劣

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習慣や風俗は常に大国や経済力のある地域の影響を受けますが、だからといって大国の、経済力のある地域の風習が優っていて、小国や地方の習俗が劣っているということではありません。

習慣、風俗、習俗、風習びみょうに言葉の意味が違いますが、面倒なのでひっくるめて文化とします。

 

2000年ほど前の中国の漢帝の一宦官の中行説が匈奴へ帰順しました。

当時漢帝国は北方の騎馬民族である匈奴へ皇帝の娘などを嫁に出す『降嫁』やたくさんの贈り物をして和親を保つ政策でした。

匈奴へ帰順したのは、その『降嫁』で公女(皇帝の娘)の身の回りの世話をさせるための宦官の中行説というひとでした。

 

中行説は不純な動機でしたが、匈奴の文化を守ることを匈奴の王である単于に説き、信任を得て仕えました。

彼の不純な動機というのは、自分を戻ることのできない辺境の匈奴の地へ追いやった漢の朝廷に対する恨みでしたが、普通の策士なら、漢帝国の制度や仕組みを使って匈奴を強国へしようとするのが普通。彼の功績は、匈奴の地域に根ざした伝統的文化こそが、強さの秘訣であり、守るべきものだと説き、漢帝国の産物に溺れはじめた匈奴の生活文化を強く諌めました。

衣食住も基本的に匈奴のものがもっともこの地に於いて優れているとして、絹織物と以前の毛皮の民族衣裳とで茨の路を行かせ、毛皮がいかに優れているかを説き、漢の食物より匈奴の乳製品のほうが力もでるし、美味いということを単于自ら示すことを諭しました。

移動式の住居も極めて匈奴の強さに必要不可欠なものであるとし、それまで、獣を喰らい、定住しない蛮族とされた匈奴の文化を強く誇りを持って弁護しました。

彼は獣を喰らい定住しない蛮族へ追いやった朝廷への恨みで、漢の災いとなることを目指し、匈奴に帰順していたのですが、彼がこういった匈奴の文化を強く弁護したことからも、おそらく、実際に匈奴の文化に触れて、けっして蛮族ではなく優れた文化を持った民族だという事がわかったのではないでしょうか。

彼は、漢の使者が批判した、匈奴の風習である、兄弟が一人の妻を娶ったり、父子兄弟が死ぬと残ったものが未亡人を妻にすることなども弁護しました。

家系の断絶を防ぐだけでなく、厳しい自然環境の中で未亡人も含めて、一族が結束して生活するための当然の風習なのです。もし、未亡人を家から放り出したらどうなるでしょう?残された子供達は?新しい、妻を娶って生まれた子供達と増えた家族を養うだけの遊牧地は?家系種族の断絶を防ぐだけでなく、過剰な一族の増加を防ぎ、生活の糧である遊牧を確実に次代へ残すためのものです。

 

しかし、今では兄弟で一人の妻を娶ったり、未亡人を兄弟や子が引き続き娶ることは、恥ずかしい風習と思っている人々もかなり多くなったようです。

チベットへ行ったときに昔はと前置きされながら、こういった因習は恥ずかしいことのように語っていた人がいたのですが、中国の中央政府の教育のせいなのかと残念に思いました。でも、他民族である僕が、中行説のように、チベット族に帰順するわけでもないのに「それは違います」と言うのもおかしいと思い何も言わなかったのですが・・・。

 

教育や衣食住の基本的な文化は、チベットだけでないのですが、世界各地の地方に於いて、日本も例外ではなく、その地域の固有のものが次々失われていってます。

 

中行説

 動機が不純で事あるごとに漢帝国への抵抗を訴えただけに、評価の分かれる人ですが、僕は今の地方の人々が見習うべき人物の一人と思うのです。

 

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