不便の条件

|

ここ数年、自然保護が叫ばれていますが、その一つに一部の山岳道路の開発中止や、車両規制の動きがみられます。

 

自然保護活動家の中には、国外の様々な事例から車両の規制や交通の便の悪い地域でも大きな観光収入を得ている地域もあることを紹介し、これら不便を強いられても経済的ダメージは少ないと論じています。しかし、この主張には決定的に抜け落ちている部分があるのです。

 

確かに交通の便の悪い地域でも世界的に有名な観光地やリゾート地は数多くあります。その中でもあえて道路整備を行わない地域もあるのですが、その地域に共通するものがあるのです。

 

それは、地域や地元民の権利が非常に強力だということです。

 

例えば、世界的にも有名なペルーのマチュピチュ遺跡。

マチュピチュ遺跡に行くにはペルーの古都クスコから、ふもとのアグアスカリエンテスまで移動しなければなりませんが、基本的に鉄道しかありません。

鉄道でアグアスカリエンテスに着くと、そこからはバスでの移動になりますが、ここまで道路がないので、遺跡までのバスは全て地元民の運営するバスです。

地元の人も道路の開発は反対です。なぜなら客が増えても外からバスが入ってきて客を奪われるからです。

同じ理由でロープーウェイなども歓迎しません。

完全な地元独占市場になっているのです。

またクスコでは観光バスには必ず地元民をガイドとして乗せることが義務付けられてます。

観光資源が地元民のものであるということを地元民も国も訪れる観光客も理解している結果で当然のことなのですが、今の日本人や中国人には理解不能なはず。

グッバイボーイたちの活躍がとくに面白く、子供のうちからマチュピチュが大切な自分たちの資産であることを実感できるのだと感心しました。

 

もう一つはよく車両規制の引き合いに出されるスイスのツェルマット。

ツェルマットは特に成功の実例としてあげられているけど、基本的に経済構成まで含めた解説がなされることはほとんどない。

僕も一度行ったきりなので詳しくはわからないけど、ホテルやレストラン経営に関して親族経営が多いように見受けられる。大手ホテルもあるが、町全体では一つのポイントとして存在しているようで、圧倒的に地元経営の施設が多いようだ。車両による大量アクセスが制限されていることも大規模ホテルの進出を阻んでいるように見えるが、山岳民族特有の地元意識が外の資本に関して本当に地元に益のある企業しか入れないという姿勢がありありとみえる。

地元意識は随所で見られる。地域の固有の文化とそれを支える地域経済の権利が法的にも制度的に認められている連邦国家ならではの繁栄と思える。

ちなみにスイスの市町村の数は2800を越える。

同じ面積で同じ人口の東北六県はいまいくつの市町村になってしまったのだろうか・・・。悲しい現実。

 

アメリカの自然公園の中には地元の元林業従事者がガイドになる優先があったり。

イギリスの世界遺産の炭鉱だったかな?確か地元出身の成人男子のみが採掘権を有するといったところもあったはず。

 

では日本で同じようにアクセス不便な観光地が自立的に成り立つかというと、答えはNO!!

 

なぜなら、観光資源の地元帰属意識が住民も観光客も行政も希薄なので、地元の権利を主張できない。また、そういった特定の地域の利権のみを主張できる法的根拠もない。平等主義と自然については特に、みんなのもの意識や国家資産意識が強すぎて、外部資本の流入を制限し、地元が独占することはできないのです。

みんなのものだから規制は一律。

入っていけない場所は地元民も入るな!!

開発してイイ場所は地域の外の資本にも平等に機会を!!

結局、資本力のある大企業が流行で開発して、客が来なくなったら使い捨てのように撤退する。

 

例えば、国内の山岳自然遺産も

・山岳道路に接する地域に居住し本籍を有するもののみ旅客運送を認める。

・国立公園内に於いては接する地域の居住者のみ営利活動を認める。

・地域の居住者以外の山菜の採種及び狩猟を禁ずる。

・ガイドは地元居住者以外は登録制とし、ガイド料は地元居住者ガイドと協議して決定する。

最低限上の条件であれば、地元民も車両規制大賛成が多くなると思うし、地元民が自然資産から収入を得られれば大きな誇りに繋がるのですが、現実には運輸に関してだけでも2種の取得や営業車両の様々な規制や検査で地元民が個人レベルで独占的旅客運送をするのは絶対的に不可能なのです。

まして、合併で地元範囲が広くなりすぎている。

 

マチュピチュ遺跡は世界的にも有名で、何もしなくても観光客が来る場所だからという主張もありますが、逆に世界中の人から注目を浴び、世界的な遺産であっても、地元の権利が強力に認められていることに注目して欲しいのです。

 

マチュピチュほどでもないヨーロッパアルプスのリゾートでも、アメリカの国立公園でも、日本と中国を除くほとんどの国と地域は観光地のでの営業権は地元優先なのです。

ただ中国ですら九寨溝内の商売については地元チベット人に限定(放牧を禁止した代わりに)してますが、バス運行やリフト運行までは任せてないようでそれは少し残念です。

中国のことをいうと、万里の長城の上でたくさんの人が商売をしていましたが、僕はとても面白く、日本よりは自由でいいなぁーと感心しました。たぶんしょば代が掛かってるんだろうけど。

 

日本の税金で販売施設を作ったはいいけど、地元のものが売れないので中国製のオモチャやお土産を売っているような状態よりは、遥かにイイと思えるのです。

 

利便性の高い地域に暮らしている人々が

そうでない地域に不便を強いるなら、

権利という対価で支払うべき!!

 

自然が資産というなら、その益を地元へ!!

 

自然が未来永劫守られることを望むなら

それを守る地元民が

そこから生活の糧が得られる制度を!!

 

例えば僕なら早池峰山のマイカー規制について、

地元の民宿の送迎車両および地元施設の車両のみ運賃営業を認めるようにするけど。

いま、旅客運送の規制では宿泊施設が旅客運賃をとって営業することを認めていないけど、車両規制地域に関してはその不便に見合う対価として地元への運賃営業権利を認めるべきだと思うのです。

どのような権利が良いのか、それは権利を求める地域によって異なるし、その違いが地域の特色となり利益に繋がるのです。

やっぱ横並び主義の日本には向かない制度ですね・・・。

不便というのは、権利という条件によっては十分に美味しい話なのですが、日本人には縁遠い話かもしれません。

このブログ記事について

このページは、malmaが2008年4月17日 23:07に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「一罰百戒?」です。

次のブログ記事は「郷に入っては、郷に従え」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。