美鱒探訪
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放流の功罪 Ⅱ

交雑種について。
交雑種(交配種)については組み合わせが無数にあるので、今回取り上げるのは問題視されていて且つ比較的昔から放流されているアマゴ×ヤマメとブルック×イワナについてです。
それでも、ちょっと長くなりそうなので、何回かに分けて書いてみます。
テキストだけなので、難しいのが嫌いな人や興味がない人は読まなくてもいいです。
ときどき、調べた事、考えた事、わかった事とかを書いておくのもいいかなと思っただけです。
ちなみに、参考文献※6は古いのでちょっと自信なし・・・。
今回は何故?どうして?どのような交配が行われるのか?です。

まず、なぜ交雑(以下交配)が行われるのかというと、人為的なものと自然によるものとがあります。自然によるものといっても、多くは人為的な要因で起きているのですが、ここでは2つに分けて考えます。

人為的な交配。
人工交配は身近なところでは農業作物や園芸植物、畜産、愛玩動物などなど、様々な生き物で行われています。魚類では金魚や錦鯉など観賞魚で多く行われています。目的は多くは生産性の向上ですが、園芸植物や観賞魚などは見た目の美しさを追求して行われています。
サケマスの場合は観賞魚として飼育することは稀ですし、観賞魚としての市場は小さいので、交配は生産性の向上(病気に強い、成長が早い、脂がのっている、孵化率が高い又は1代限り※1)を目的にしています。

自然交配。
 自然交配といっても、多くは放流によって引き起こされているのですが・・・。
 通常、ニジマス×ヤマメなど産卵場所や産卵時期が異なる種同士では普通自然交配は起きません。
 産卵時期が同じヤマメ×アマゴ、ブルック×イワナ、イワナ×ブラウンなどで多くみられます。
 種族が離れているほど、孵化率や生存率は下がり、組み合わせによっては全く子孫を残さないものもあります。メスとオスの組み合わせによっても結果が変化します。
 多くの場合、交配して生まれることができても、その1代雑種F1は子孫を残すことができません。また、意外なことにヤマメ×アマゴやブルック×イワナなどは1代雑種F1同士では子孫を残すことができても、多くの場合それぞれの親の品種とは子孫を残すことができません。戻し交配※4はできないか、僅かしか子孫を残せない場合がほとんどです。
 
■ヤマメ×アマゴの場合
 ヤマメは通常は雌のほとんど、また北方では雄も生まれる固体の多くが降海してしまい、河川に残留する個体が少ないのです。そのため、山間部や川の上流などではヤマメ増殖の効率が悪く、これを改善するため陸封型が多いアマゴと交配させる研究は大正時代から行われてきました。
 戻し交配が難しく、交配種同士では高い孵化率で子孫を残すことができます。そのため中禅寺湖など湖沼でヤマメ×アマゴの交配種のホンマスが定着しています。河川では、放流後数年は交配種が発生するがアマゴは上流域にヤマメはその下に棲み分けができる場合と、より河川環境に適応できて優勢なアマゴかヤマメのどちらかだけになる場合があります。また、河川でも、小規模河川やダムや滝などで生息範囲が限られているような場合などで在来種と移植種が駆逐され交配種のみが生き残る場合もあります。他にはアマゴが降海型のサツキマスの特徴を有した場合、ヤマメと交配すると交配種も降海する個体が発生します。富山県などで有名な富山の鱒寿司の材料※3にアマゴ×ヤマメの交配種が入り問題となっています。

■ブルック×イワナの場合。
 ブルックは北米原産で日本にやってきて100年経ちました。
 連れてこられた理由は食糧増産。当時、国内の在来種でも近代的な養殖事業が始まったばかりでしたが、イワナの養殖は非常に難しく代わりの品種が求められていました。そんな中連れてこられたのがブルックとニジマスです。ニジマスは養殖が簡単ですぐに全国的に広まりましたが、ブルックはイワナと交配させてイワナ(交配種)の養殖を容易にするためにおこなわれました。交配種は親の種の良い所取りで成長も非常によく、注目されましたが、ニジマス養殖のほうが効率がよかったためあまり広まりませんでした。そんな中、初期の養殖場から逃げ出したり放流されたブルックは有名な湯川、西別川、梓川などで定着したのです。これらの河川では現在では交配種は少なく(1代交配種F1は稀に発生)、在来種と混泳する姿を見ることができます。近年一部河川では新たに放流されたブルックと在来種のイワナとの交配が問題となっています。理由の一つとして、産卵期がイワナと同じであり、湯川や西別川のように、まだ産卵場所の棲み分けが完了していないことも考えられるのですが、ダムやその他の理由※5により、産卵場所がどうしても同じになってしまうという原因も考えられるのです。ヤマメ×アマゴのように交配種のみが繁殖し在来魚種を脅かす事態も考えられるのです。特にブルック×イワナの交配種は成長もそれぞれの親よりも早く、丈夫で強いのが特徴です。ヤマメ×アマゴと同様に戻し交配による子孫の残る率は低くく、近年はブルック×イワナの交配種は成長がよく強い特徴を買われて管理釣り場などで利用される機会が増えたのです。そのため、交配種は河川へ逃れる機会が増えたのですが、非常に強く大きな本種は産卵時にも在来種より優位に立つので、メスを巡る争いで在来種のイワナを追い払ったり、大きな交配種の雌に在来種のイワナの雄がペアリングしたりするのです。この場合の戻し交配では子孫はほとんど残らないので、河川の在来種と交配種とも数を減少させて、結果的に在来種を激減あるいは失わせる可能性もあるのです。

ここまで、読んじゃった人は続き↓↓↓も読んでね。

※1 1代限りの品種は他で再生産ができないので優れた品種であれば生産業者が独占※2できることと、天然水域に逃げ出しても増えることができないので研究される。また、1代限りで生殖できない個体は卵や精を作らないので脂がのって価値が上がる。植物でも種無しの果物や一部の園芸植物などがある。

※2 生産業者の独占は、一見すると市場競争を阻害しそうに思えるが、交配には時間と莫大な開発コストがかかり、繁殖力の強い品種を作ってしまうと他社や消費者が直接生産してしまい元を取ることができなくなってしまう。また、自然環境化で繁殖して生態系に影響を与えると困るので繁殖できない品種を開発している。

※3 富山の鱒寿司。
   原材料は本来はヤマメの降海型のサクラマス。
   日本海側はヤマメの分布域だが、日本海に注ぐ庄川はじめ幾つかの河川の上流部にアマゴの放流がある。そのため、サクラマスとアマゴの交配種が見られる。戻し交配による子孫が残るの率は低いので一定の数を越えない限り、在来のサクラマスがいなくなることはないと思われるが、交配種の数が多くなれば、それだけ子孫を残す率が高くなるので在来種のヤマメ(サクラマス)も移入種のアマゴも新たな交配種に占められる恐れもある。

※4 戻し交配。
   ヤマメ×アマゴで生まれた1代雑種F1を再び親の種のヤマメまたはアマゴと交配させること。
   通常、戻し交配で親に近い品種に戻すためにおこなわれるのですが、この戻し交配が効かない組み合わせもある。また、1代雑種F1がメスかオスかの組み合わせでも結果が異なる。
   したがって、ヤマメ×アマゴの交配の組み合わせは子孫を残せるかどうかわかる、元の種の親から数えて2代目までだけでも、
   1) ヤマメ(メス)×アマゴ(オス)
   2) ヤマメ(オス)×アマゴ(メス)
      3) F1(オス)×F1(メス)
      4) F1(メス)×アマゴ(オス)
      5) F1(オス)×アマゴ(メス)
   の5通りもある。

※5 ここでは取り上げませんでしたが、砂防ダムなどで急に河川が寸断されると、全く異なる種同士の産卵受精も見られます。ヤマメ×イワナなどで多くみられます。河川に残るヤマメはオスが多いので下流からメスのサクラマスが遡上してこなくなるとイワナのメスと自然交雑したり、ダム下でサクラマスが遡上できないでいると、イワナのオスと交雑したりします。これらの子供は1代限りで、子孫を残すことができないのでイワナもヤマメも減少する原因となります。その他、本来イワナしか生息していなかった上流部にヤマメが放流されたため交雑が起きることもあります。また、河川の環境変化や水温上昇でヤマメが普段より上流部へ移動して産卵しているということも考えられます。

※6 参考文献
  『大島正満サケ科魚類論集 : 淡水魚別冊 』
  『イワナ : 淡水魚増刊 』
  『サケマスの生態と進化  : 前川光司  文一総合出版』 
  『漁業生物図鑑 北のさかなたち : 北日本海洋センター』
  『サケマス魚類のわかる本 : 奥山文弥』
  などなどが主に参考となりました。
  その他、インターネット検索にて1例として【サクラマス ヤマメ 交雑 富山】などで検索し、交配種の出現状況を表示される概要から調べました。

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